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心理職 国家資格化と受験資格



心理職の国家資格化が話題にのぼるようになってから70年弱、国家資格化の本格的な論議に入ってから20年余りの歳月が流れて尚、今もその実現に至っていない紆余屈折の道を歩んでいる状況が心理職国家資格化問題の特徴です。
その間に、40以上の心理学関連の諸学会が創設され、学会が認定する20を超える民間資格が制定されました。

国民の立場からすると、それらの資格の違いも細分化するを必然性も分からないというのが実感かと思います。
既に社会に浸透し認知される実績を積み上げた認定資格がある一方、ほとんど浸透していない資格もあります。
同じ心理学関連の学会であっても、国家資格化をめぐる立ち位置が異なること、
心理業務領域が多岐に渡り、その領域で活動する他の国家資格者との間の業務の分担と責任範囲の合意形成の困難等が心理職の国家資格化を複雑なものにしています。

これらの問題を解決するために3つの団体が形成され、国家資格化を推進するために統一見解を出すべく努力がなされています。
3団体の加盟学会や団体は重複している場合もありますが、
日本心理学諸会連合45団体、臨床心理職国家資格推進連絡協議会23団体、医療心理師国家資格制度推進協議会25団体が加盟しています。

最新の動向
2011年10月に3団体がまとめた要望書が、2012年10月時点においても国家資格化に向けた
最新の統一方針になります。
ただし、この方針に対して疑義を唱える加盟団体も存在しており、必ずしも一枚岩ではありません。

要望事項は次の内容です。
1.資格の名称:心理師(仮称)とし、名称独占とする。
2.資格の性格:医療・保健、福祉、教育・発達、司法・矯正、産業等の実践諸領域に
  おける汎用性のある資格とする。
3.業務の内容:
  /翰的な支援を必要とする者とその関係者に対して、心理学の成果にもとづき、
  アセスメント、心理的支援、心理相談、心理療法、問題解決、地域支援等を行なう。
  ◆´,瞭睛討鵬辰─国民の心理的健康の保持及び増進を目的とした予防並びに教育  に関する業務を行なう。
4.他専門職との連携:業務を行なうにあたっては、他専門職との連携をとり,
  特に医療提供施設においては医師の指示を受けるものとする。
5.受験資格:後述(受験資格の動きの項目で説明します。)

この要望書は、長年の主張を大きく修正した内容となっています。
臨床心理士と医療心理士の2資格を1法案によって資格化を目指すとしていましたが、ここでは、1資格1法案となっています。
医療福祉分野に限定することなく汎用性のある資格として位置付けています。
過去に法案として国会に上程しようとした際に、医療側から強いクレームがあった「心理職の責任範囲」について、「医師の指示のもとに」という文言で明確化しています。
他資格との関係に対しては、「連携をとる」として触れていますが、曖昧さは残ります。

いずれにしろ、3団体の統一要望書がまとまったことにより、心理職の国家資格化は大きく前進し、実現の可能性が高まったことになります。

※その後、2014年6月の第186回通常国会に「公認心理師」という名称で悲願の国家資格化法案が上程されました。
ここでは成立に至りませんでしたが、継続審議となって秋の臨時国会で引き続き審議されることになります。
法案成立の可能性がとても高くなりました。

国家資格化の変遷
【1990年】:
厚生省の心理技術者資格制度検討会が設けられ本格的な議論が交わされるようになります。

【2001年】:
厚生科研費事業 「臨床心理技術者の資格のあり方に関する研究(平成11年〜13年)」結果が報告され、心理職の国家資格が必要であること、国家資格化の範囲は、医療・保健施設に関わる範囲に限定して、医療保健心理士として実現することが提案されます。
心理職の業務は、医療、保健、福祉、学校、警察、司法、企業他極めて多岐にわたり、管轄省庁も複数にまたがるため、一律な資格とすることは困難であり範囲を限定した国家資格が妥当であり、名称独占資格として提言したのです。

【2004年9月】:
医療領域での心理職の国家資格制度創設を目的とする「医療心理師国家資格制度推進協議会」が設立されました。

【2005年7月】:
民主党議員、自民党議員らの超党派議員連盟の合同会議により、臨床心理士および医療心理師法案要網骨子が発表されます。
この「二資格(臨床心理士・医療心理士)一法案」の国会への上程は実現しませんでした。
医療側との合議がないままに進められていた法案に対して反発が生じました。
医行為と心理学的行為の明確な定義づけもされていないままに進められている法案の危うさが指摘されました。

【2008年8月】:
「医療領域に従事する『職能心理士(医療心理)』の国家資格法制の確立を」という日本学術会議による提言が公表されました。
  (1)職能心理士(医療心理)養成カリキュラムの学士課程設置
  (2)職能心理士(医療心理)の国家資格法制化
  (3)職能心理士(医療心理)の国家資格取得の仕組みの確立
を結論とするものですが、臨床心理業務を医療の範囲に限定しています。
 
この公表の前の「健康・医療と心理学分科会における対外報告」の段階で日本臨床心理士会側は、この1資格1法案の内容に対して苦言を呈しました。
臨床心理士の活動領域は医療分野に限らず多岐に渡っています。

【2008年10月】:
日本心理学諸学会連合理事会において以下の内容が決議されました。
  「日本心理学諸学会連合は、2資格1法案を支持する」

【2009年】:
国家資格化を推進する3団体(日本心理学諸学会連合、臨床心理職国家資格推進連絡協議会、医療心理師国家資格制度推進協議会 )は、3回に及ぶ会談を通じ、2資格1法案をこのまま推し進めるのは困難とし、「一資格(心理師)一法案」を検討せざるを得ないという認識に至ります。

その後4回(2009年8月)5回(同年9月)6回(同年11月)の会談を経て、
「国資格をめぐる日本心理学諸学会連合の方針(修正案)」が取りまとめられました。
  
 「日本心理学諸学会連合の資格の基本コンセプト」
・ 資格の名称:○○心理士、心理士、心理師等が考えられる。
       (「心理士(心理師)」を「心理士、心理師」に修正)
・ 資格の性格:医療・保健、福祉、教育・発達、司法・矯正、産業等の社会的実践諸領域     における汎用性のある資格とする。
・ 医療提供施設においては医師の指示を受ける資格とする。
・ 受験資格者:ヽ愽卒+大学院(修士)修了者、学部卒で数年間の実務経験をした     者。

一資格一法案に基づく基本コンセプトです。

【2009年5月】:
全心協役員会(臨床心理職側)にて、「2資格1法案」を堅持する方針を役員会で確認します。

【2010年5月】:
日本心臨学会は資格問題に関する緊急理事会を開催し、
「 二資格一法案をベースにして、一資格一法案の検討を進める」との採決動議を否決しています。加えて、一資格一法案を推進している日本臨床心理士会を痛烈に批判します。

【2011年10月】: 
冒頭の最新の動向項目に記載した3団体による要望書が公表されます。
12月に、新聞数紙に「臨床心理士 国家資格に」と掲載されましたが、3団体が推し進めている国家資格化は臨床心理士を国家資格にスライドさせるものではなく、新聞報道の誤りを指摘します。

【2012年4月】:
日本臨床心理士養成大学院協議会理事会から「国家資格についての基本姿勢と提案」が発信され、「臨床心理士の国家資格化に向けて」活動を展開していく予定である、としています。

この提案に対して、日本臨床心理士会は同意できないことを表明しています。

以上のように、必ずしも一枚岩といえず諸問題を内包しているようですが、2011年10月の要望書に基づいて、超党派による議員連盟が法案化の成立に向けて動き出しています。

【2014年6月】
政権交代により足踏み状態を余儀なくされましたが、6月の第186回通常国会において、悲願の国家資格化法案が上程されました。
一資格一法案、資格名称は公認心理師、資格の性格は名称独占型を内容とする法案です。
この国会では成立に至りませんでしたが、秋の臨時国会で継続審議されることになっています。

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受験資格の動き
受験資格:
 (1)学部で心理学を修めて卒業し、大学院修士課程ないし大学院専門職学位課程で
  業務内容に関わる心理学関連科目等を修め修了した者。
 (2)学部で心理学を修めて卒業し、業務内容に関わる施設において数年間の実務経験  をした者も受験できる。

この受験資格が2011年10月の要望書に明記された1資格1法案に基づく受験資格になります。

それまでに日本学術会議の提言においては、「第三者認証を受けた職能心理士(医療心理)養成機関の卒業者は、職能心理士(医療心理)補として医療現場で勤務し、指導を受ける実技研修の法的裏付けが必要である」とした見解や
心理士団体からは「学部卒と大学院修了に受験資格を認める2階建てにする」意見や「大学院修了のみに受験資格を与える」意見などもありましたが、上記受験資格が2012年においても統一見解になってます。

【公認心理師国家資格化法案の受験資格】
2014年の通常国会および臨時国会で審議されている受験資格も、上記受験資格に沿う形になっています。
概要は、
一 大学において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として
  文部科学省令・厚生労働省令で定めるもの(以下省令で定める科目)を修めて
  卒業し、かつ、大学院において省令で定める科目を修めてその課程を修了した者。

二 大学において省令で定める科目を修めて卒業した者であって、省令で定める
  施設において一定期間以上次に掲げる行為の業務に従事した者。
  ○心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
  ○心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、
   指導その他の援助を行うこと。
  ○心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導
   その他の援助を行うこと

三 文部科学大臣及び厚生労働大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識及び
  技能を有すると認定した者。

法案原文については、こちらの衆議院のホームページに掲載されています。 
ただし、法案が国会で承認されたわけではありませんので、あくまで案としての受験資格です。

【参考資料】:公表されている次の資料を参考にしています。
ホームページ(日本心理学諸会連合、臨床心理職国家資格推進連絡協議会、医療心理師国家資格制度推進協議会、日本臨床心理士会、日本臨床心理士資格認定協会、日本臨床心理士養成大学院協議会)
日本LD学会 日本社会臨床学会、全心協ニュース、日本学術会議提言、 日本精神神経科診療所協会、東京新聞、臨床心理技術者の資格のあり方に関する研究 日本臨床心理士会電子版速報

 

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